妊娠中にお母さんが心配されることのひとつに、お母さん自身が感染症にかかることでお腹の中の赤ちゃんに悪影響が出ないか?ということがあります。特に今は新型コロナウイルスについて不安に思っている方も多いかと思います。
新型コロナウイルスについては、分からないことは多いですが、妊婦さんが重症化したり、新生児が重症化したという事例は今のところありません。出産に制限(例えば場所の制限、立ち合いの制限など)がついてしまうのでかからないに越したことはないですが、仮に感染してしまっても出産そのもののリスクが上がることはそれほどないでしょう。
妊娠中に怖い感染症としてまず挙げられるのが「風疹」です。妊娠中に風疹にかかってしまった場合、胎児に難聴、白内障、心疾患などの重い障害が発生する可能性があります(先天性風疹症候群)。妊娠中はワクチンを接種することはできませんので、妊娠を希望する場合はあらかじめ、抗体検査をして、抗体値が低かった場合はワクチンを接種しておきましょう。望ましいのは自分だけではなく、パートナーの方も一緒に接種しておくことです。
「GBS(B群溶血性連鎖球菌)」という細菌もあります。膣に常在していることがある菌で、母体に対するリスクはありませんが、出産時に赤ちゃんに感染すると、敗血症や髄膜炎を起こす可能性があります。こちらは35~36週に検査をして、陽性だった場合には、分娩直前に抗菌剤を投与することで対処します。
また母乳を通じて感染する病気に「ATL(成人T細胞白血病)」というものもあります。基本的に不顕性(症状が出ない)がほとんどですが、発症すると致死率が高い病気です。赤ちゃんが感染してもすぐに発症するということはありませんが、将来発症するリスクを抱えることになるので、感染予防の対策を行う必要があります。妊娠中に採血検査をすることで保菌者(キャリア)かどうかが分かるので、保菌者(キャリア)だった場合には、ATLは母乳によって感染すると言われているため、母乳ではなくミルクを使用するように指導しています。
ちなみにATLは日常生活で他の人にうつる病気ではありませんので、その他で特に生活を変える必要などはありませんので、安心してください。
さいたま市の産婦人科 丸山記念病院
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