女性の場合、月経の影響もあり貧血がとても多いです。では、妊娠時の貧血症状についてはどうなのでしょうか。
まず妊娠時には体の中の血液の量が増えます。血液中の成分の量は変わらないので、血液が薄まった状態になります。これを「希釈性貧血」と言います。体の中の鉄分が減るわけではなく、あくまで見かけ上の貧血なので、それほど気にする必要はありません。
貧血の指標は「血中ヘモグロビン値」で見ていきます。一般的にこの数値が11を切ると妊娠性貧血と診断します。またM C Vという指標も重要です。M C Vは赤血球1個あたりの
ヘモグロビン量を表すもので、これが少ないとなんらかの形で鉄分を摂取する必要が出てきます。
妊娠時は胎児の成長のために鉄分が妊娠していないときより多めに必要になります。また出産時には必ず出血(少なくとも500ccくらい、血液のかさが増えているので、1000cc出血する人も珍しくありません。)するので、その準備として、体の中の貯蔵鉄を増やしておく必要があります。鉄分をきちんと摂取することも出産の大切な準備の一つというわけです。
妊娠性貧血の場合には鉄剤を処方します。鉄剤というと、少し前に女子駅伝の選手に鉄剤注射を打っていることが問題になったニュースを目にした方もいるかもしれませんが、鉄不足を補うために飲む鉄剤は全く健康上の問題はありませんので、安心してください。妊娠性貧血は妊婦さんがなりやすい症状の一つですので、鉄剤の処方はスタンダードな治療法です。
ちなみに貧血というと、学校の朝礼などでいきなり倒れる、といった情景を思い浮かべる方も多いかもしれませんが、あれは鉄分不足からくる貧血とは異ります。脳貧血と言われ、温度変化などで血管が拡張してしまい、一時的に脳に血液が回らなくなることから起こる迷走神経反射と言われるものです。
妊娠に関係なく、日本では女性の4人から5人に1人が貧血だと言われています。貧血は多くのデメリットがありますので、普段から鉄分を意識して摂っておくと良いですね。
さいたま市の産婦人科 丸山記念病院
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