現在妊産婦の死因1位となってしまっているのが「産後うつ」です。医療界でも大きな問題となっており、報道などで目にしたことのある方もいらっしゃると思います。
産後うつは時期としては産後1年以内くらい、いつでも誰にでも起こり得る症状です。産後うつによって、自死を選んでしまったり、赤ちゃんに手をかけてしまったりというケースは珍しくありません。未だに「うつは甘え」・「精神的に弱いから」というような考え方をする人がいますが、うつはれっきとした「病気」であることをきちんと認識していただきたいと思います。
産後うつに限らずですが、うつ病の明確な原因というのは分からないことが多く、予防と言ってもなかなか有効な手段を取りづらいものです。
産後うつになりやすいタイプとしては、真面目な人、スケジュール通りにものごとを進めようとする人が挙げられます。赤ちゃんはこちらの思った通りにはいきませんので、そのことがストレスになってしまうからです。
大切なのは、お母さん本人が現実逃避できる手段を持っておくこと、悩みやストレスを溜め込まないことです。また周りのフォローも重要です。ワンオペ育児は良くありません。お母さんが困った時には話を聞いてあげてください。
特に男性の場合は、話を聞いた後にアドバイスや建設的な意見を言おうとしますが、それはやめてください。すでに頑張っていっぱいいっぱいな人に、さらに頑張れと言ってはいけません。ただ話を聞くだけで良いのです。
赤ちゃんの心身の健康を守るという面では、様々なケアやシステムがありますが、お母さん本人のケアはおろそかになりがちです。産婦人科でも1か月健診までは診ることが出来ますが、その後はなかなかフォローが難しいというのが現状です。
うつ病の難しいところは、良くなってきた時が危ないという点です。本当に症状がひどいときは、死ぬという行動すらできないほど落ちてしまっていることが多く、ちょっと元気が出てきたなという時に死を選んでしまうケースも多いからです。うつ病の場合は、絶対に1人にさせてはいけません。
今、日本産婦人科医会としても、お母さんのメンタルヘルスケアには力を入れており、国としてもバックアップをしてくれています。(※MCMC 母と子のメンタルヘルスケアHP)
メンタルヘルスのテストで点数が高い場合には、行政などと連携を取り、フォローできる体制を整えています。
また埼玉県では、新型コロナウイルス感染症の関連して、妊産婦の心のケア・無料オンライン相談窓口を設けています。丸山記念病院も含め、7つの相談窓口がありますので、積極的に利用してください。
(※相談窓口についてはこちらをご覧ください。)