毎年、3月4日は、国際パピローマウイルス学会が開催する国際HPV啓発デーです。今回はそれに関連して、日本でもやっと定期接種として採用されたHPVの9価ワクチンについて紹介したいと思います。
まずHPVとは、ヒトパピローマウイルスの略で、このウイルスに感染すると様々な疾患の因子となります。
特に子宮頸がんのほとんどがこのHPV感染によって引き起こされることが分かっていて、ワクチン接種によってリスクを大幅に低減することができます。もし世界中できちんとHPVワクチンを接種できたとしたら、子宮頸がんという病気は無くなると言われるほどです。
日本は先進国の中で、ワクチン行政が非常に遅れています。特にHPVワクチンについては、定期接種でありながら、長い期間、積極的な勧奨が控えられていたため、諸外国に比べ、大幅に接種率が悪くなっています。地道な啓蒙活動によって、ここ数年、多少は接種率が上がってきましたが、まだまだ理想とは程遠い数字となっています。
そんな中、ようやくHPVの9価ワクチンが定期接種に採用されることになりました。4月以降、9価ワクチンを選択できるようになります。ちなみに9価ワクチンについては2回接種になります。
既にこれまでの2価、4価のワクチンで1・2回目の接種を受けている場合でも、3回目で接種できるというふうに聞いています。
HPVワクチンは、HPVの中でも特にがんなどの疾患に因子になりやすいハイリスクな型に対してのワクチンになります。これまで使用されていたワクチンでも7割~8割程度の型をカバーできていました。9価ワクチンについてはハイリスクなHPV群のかなりの範囲の型をカバーできます。
なお、積極的な勧奨が控えられていた時期に定期接種の年齢だった方々(1997年4月2日~2006年4月1日生まれの方)に対しても、公費でキャッチアップ接種ができることになっています。ただしキャッチアップに9価ワクチンが適用になるかは、お住まいの自治体に問い合わせてみてください。
本来は性交渉前の感染していない時期に接種するのが理想ですが、前述したようにウイルスには型があります。仮にA型には感染していても、B型には感染していない状況であれば、ワクチン接種によって相対的なリスクが下がるので、当時機会を逃してしまった方は、是非接種を検討してみてください。
また本来、HPVワクチンは男性も接種すべきワクチンです。男性の場合でも、HPV因子の口腔がん、喉頭がんが発症することが知られています。そのリスクを低減するとともに、将来的にパートナーとなる女性に感染させないというベネフィットもあります。実際にアメリカ、イギリス、ニュージーランドなどでは、男子も定期接種の対象となっていますが、日本では自費になります。
日本国内では、毎年約1万人の女性が子宮頸がんにかかり、その打ち約3000人が命を落としていると言われています。子宮頸がんはワクチンで防げるがんです。自分の命、そしてお子さんの命を守るために、ワクチン接種をお願いします。
さいたま市の産婦人科 丸山記念病院
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